< じゃぁ、またね >
先週は寂しいって気持ちが身体中、ぱんぱんに膨らんで、なんだか暗い調子になってしまった。
不思議だよ。絶対的にあたしを愛してくれる息子がいて、いつのまにかいい歳にもなって、男なんていくら代わってもぜんぜんへっちゃら、
「失って惜しい男はいないわ」
などと捨て台詞も吐けるようになったこのあたしが、今回、みんなとお別れするのがこんなに寂しいなんて。
そうそう、前回のブログを読んだ友人から電話がかかってきたんだ。
「おまえはどこまでファンに甘えるのだ」だって。
そうかもね。あたしのブログは愚痴が八割、自慢が二割。すっげぇ甘えた日記を書いているなと、改めてブログを読み直して思ったよ。喧嘩は買いまくるしさ。
ふざけた女だと自分でも思う。
コメンテーターなんかして偉そうに意見をいったりなんかしてるけど、始終あやふやな感情に揺さぶられている。
講演だって、そう。台の上に立って話すのはあたしじゃないだろ、っていつも思ってる。この会場の中で、いちばん怪しい人物は確実に自分に違いないと。
高校もろくすっぽ通っていない。長くつづいた仕事は、水商売と作家だけ。
知識がないから、クイズに出ればビリッケツ。家族や親戚から、恥をかかすなっていわれるておる。
じゃあ、なんで仕事をこなしていけるのかと考えたら、ひとつしか思いつかなかった。
勘の良さだろう。
私生活ではこの勘の良さが仇となったりもするが。
数年前、当時つき合っている彼氏ときゅうに連絡が取りたくなった。でも携帯が繋がらない。ふと、都内のホテルの名前が脳裏に浮かんだ。不思議に思い面白半分で電話を入れてみた。するとそこにいた、そいつは。九州に出張にいっていたはずなのに。
悲しい勘の良さだ。勘が良くて助かるのは、仕事においてだけだ。
……でも、それってどうなの? 唯一の長所が、勘の良さって。二択のクイズを当てる才能みたいな。誉められたもんじゃない。
ちょっと前に流行った成分解析という占いで、室井佑月という名を調べてみたら、
室井佑月の68%は魔法で出来ています
室井佑月の22%は波動で出来ています
室井佑月の6%は理論で出来ています
室井佑月の4%は言葉で出来ています
という結果になった。
よくわからないけど、ふんわりと当たっている感じがする。
理論と言葉という二つの成分はおいといて(ちゅーかそれが一番大事なんか)、魔法と波動というのは理解できる。
あたしは、みんながかけてくれた魔法と、みんなが発進している波動でできた女なんじゃないかと思うことがある。
魔法の力で本を出版し、テレビに出ているんじゃないかと。
そして、勘の良さを活かし、みんなが「こうであろう、あの女は」という波動を受け止めあたしというものになっているんじゃないかと。
魔法が解け、みんなの波動をキャッチする力がなくなったら、ただのろくでもない女だ。
いや、我が儘だし、短気だし、頭悪いし、快楽主義だし、今だって相当なろくでもない女だと思う。
けど、だからこそ、こんなあたしに出来ることは、なんでもやっていきたいと思う。
いっとくが万引きとかじゃないからね。
といっても、それほど力はないからさ。
あたしを支えてくれるみんなが、みんなを支えてくれるそのまわりの人が、そのまわりの人が大切に思っている人たちが、
一年間に百回笑うとしたら、それを百一回にしたい。
十年間に百回不安に思うことがあったら、それを九十九回にしたい。
……ちょっと匂うかしら。
あたしらしくない、あたしにとっては気合いの入った重い告白。こうして書く以上、みんなとの約束だと思うから。苦手としてる。
前回のブログで、重い発言をするって書いたじゃん。
仕事の関係者たちが「なにを暴露されるんだろう」って怯えてやんの。
わりと恐れられているのかしら。こーんなに可愛らしいあたしなのに。見たらわかんだろ。
迷言や不審な行動の多いあたしだけど、
「しょーもねーなー」
とあなたが苦笑いしてくれますように。
願わくば、ずっと、ずっと。
2006 09 26 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< さようなら 序章 >
これを書き上げると本日の仕事はおしまい。秘書の神林と飲みにいこうと思っている。
神林は酔っぱらうと面倒なので家に帰らない。なら、寂しくないじゃん。
なんだか、みんなのコメント欄を読んで、寂しくなってしまったわ。
仕事の一つとしてはじめたブログだったけど、みんなと絶ちがたい繋がりができてしまったように感じて。
あたし、「さよなら」にいちばん弱いの。
でも、ごめん。
契約の関係上、今月一杯なんだ。
一応、あたしはプロだから、ここだけ特別に無給でということにはいかない。
誰からか「結局、金かい?」と指摘されたけど、半分当たって、半分外れてるな。
そりゃあ、あたしは原稿を書く能力や思想を売ってご飯を食べているわけで、というかそれしか能力はないからその方法しかないわけだけど、でも「じゃあ金を稼ぐためだけかい」といわれれば、ちょっと違う。
ちょっとじゃなく、絶対に違ってる。
そうそう、身体の具合が悪いんじゃないかと心配してくれている人もいたけれど、ありがとう、今のところ身体はいたって健康よ。
ただ、長い小説執筆に気持ちを集中させるため、心をずっと淀ませている。
でもさ、そうすることが自分にとって大事だから。それがあるから、自分を生かしておけるっていうか。
定期的にどっぷり暗〜い気分に浸るわけ。
そうすっと、きゅうな爆発しないじゃん。
小説を書くようになって、気分のアップダウンのバランスを取ることを覚えた。それはあたしにとって、すんばらしい宝刀を手に入れたようなこと。それさえ持ってりゃ、なにがあっても生き延びていけるさ、みたいな。
「んじゃ、それがなきゃ、おまえ駄目なんかよ」
というツッコミが入ることを予測して答えれば、
「そうね、その通り!」
胸を張って堂々と返事すんぞ。
あたしを姉さんと呼んで慕ってくれた可愛い子たちがいる。
ブログを辞めることじゃなく、むしろあたしはそういう子たちに、騙すような真似をして悪かったといいたい。
いや、騙すつもりなどまったくなかったんだけどね。
案外、あたしは弱っちい人間なんです。どっちかってーと手下タイプ。下僕タイプってやつ。
次回は最後だし、みんなに甘えてもっと重い告白をすんぞ。覚悟しておいてくれ。
2006 09 18 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< お知らせ >
9日10日 6時
今月いっぱいで、このブログは閉鎖します。
(過去の記事は読めるようにしておくけど)
あと数回あるけれど、今までここを読んでいてくれていたみんなに、きゅうに伝えるのもどうかと思って。
最後だから、なにか質問やコメントがあったらトラックバックしてちょうだい。
できるだけ返事するから。
2006 09 11 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 人身売買 >
8月31日15時
作家の板東真砂子さんが、自分の飼い猫を避妊させず、生まれた子猫を「殺している」と日本経済新聞に書いたエッセイに対し、抗議が殺到したらしいね。
彼女は雌猫を三匹飼っており、子猫が生まれるたび家の隣の崖に放り投げているんだって。
彼女いわく、
「人は他の生き物に対して、避妊手術を行う権利などない」
「自分の育ててきた猫の『生』の充実を選び、社会に対する責任として子殺しを選択した」
うーん、彼女のいっていることもわからなくもない。でも、だからといって新しい命を始末する権利はあるんだろうか。
まあ、そこらへんのことは置いといて(一番重要であると思われるが)、このエッセイのタイトルだ。
エッセイのタイトルは『子猫殺し』。
あたしは妙なところで関心してしまった。
このタイトルはいい。イカす。
ニュースで話題になっていなくても、日経新聞をとっているなら絶対に読んでいるだろうな、と思った。
だって、「子猫」に「殺し」だ。
シンプルでわかりやすく、そして背中がぞくっとするようなタイトルじゃぁありませんか。
そういえばこのタイトルに似たもので、外国人の作家が書いた小説『赤ん坊を落とす』というのがある。
あたしはそのタイトルも抜群にいいと思った。おなじような理由から。
作品の名前であるタイトルって大事だ。けど、あまり考え過ぎちゃいかんのかも。
妙に懲りすぎたタイトルっていただけない。恥ずかしいよ。
……ずいぶん話がズレちまったな。板東さんのエッセイについてだった。
あたしの女友達、いかず後家やバツイチらは、そろいもそろってその濃ゆい愛情を犬や猫に注いでいるので、この問題に対しかなり熱くなっていた。
ちょっとうるせー。
彼女らのいうことはもっともだと思う。けれど、犬や猫に対し自分のことをママという彼女らには少し引いてしまうのも事実。
その愛情をどうして人間の男にいかせないのだろう。
先日、こんなことがあった。板東さんの問題で騒いでいる女友達の一人から、すげぇ話しを持ちかけられたのだった。
「うちの弟、消費者金融で首がまわらなくなってさ。はじめは家族で尻ぬぐいしてたんだけど、これ以上はね。……ねえ、あんた、一千万でうちの弟買わない? 馬鹿だけどよくしこんであるから、いわれたことはちゃんとやるよ。結婚するなり、愛人にするなり、家来にするなり。煮ても焼いても良し! しかも、あんたに逆らったらうちの家族みんなで弟を殴りにいってやるアフターフォローつき。どうじゃーっ!」
マジかよ。
驚いたけど、面白そうなのでほかの女友達を誘って、弟を彼女の田舎まで見にいった。
やなで鮎食い放題、温泉つき。ぜんぶ彼女の接待だ。
でも、結局弟を買う人間はいなかった。
「身体があんなに大きかったら、家に置いとく場所も考えなきゃならないしなぁ」
あたしはいった。
ほかの友達は、
「ハンサムだけど、三十歳を越してるのがね。だって、あたしの老後を見てくれなくちゃ」
接待費まで使い弟を売ろうとした友達はとても悔しそうに、
「五百万ならどうじゃ!」
あのー。よく考えたら人身売買って法に触れる行為だと思うんですけど。
犬や猫と違うんだから。板東さんより酷いじゃん。
2006 08 31 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 明るい育児放棄の勧め >
8月14日17時
ほんとうはもっと早くに原稿をあげていた。あげてはいたんだけど、なんてこったい、秘書の神林がアップするとき消してしまった。で、放心状態に陥っておった。
こういうこと、一度や二度じゃないとだけいっておこう。
一度書いた原稿を再び書くのはどんなイヤか。
「こらっ、てめー、またかい!」
そういってグーで横っ面を殴ってやりたかった。
回し蹴りをくれたかった。
いやいや、
「バカヤロー!」
と怒鳴り、そのままグレて新宿へ飲みにいきたくなった。
しかし、あたしはしなかった。優しいからではない。ヘビー級の神林は強そうだからでもない。
夏休みに入った息子の相手をしてもらっているからだ。
一年間の単身赴任となってから、夢にまでみてしまうぐらい恋いこがれている息子だった。
だが、毎日毎日、朝昼晩と顔を突き合わせているとね。
あの男、夜はいつまでも起きているでやんの、朝はやたらと早起きするでやんの、昼寝はいっさいしないでやんの。とにかく寝ないのだ。
起きている間、ずーっとしゃべってる、ずーっと動いてる。見ているこっちが疲れてまうわ。
あいつが寝てからじゃないと仕事はできない。おかげであたしは、極度の睡眠不足である。命の危険を感じるほどだ。
(あの男に殺される)
そう思ったあたしは、緊急手段を取ることにした。
子供のいない友達の家に、息子と一緒に押し掛けるのだ。そして、自分はさっさと寝てしまう。強い酒を飲んでつぶれるか、友達が止めるのも聞かず睡眠薬を飲んでしまうか。
「お父さんのいない可哀想なユウタくんを、よろしくお願いいたします」
そう一言いい残して。
息子には、
「今日、おまえは××家の息子だ。どれだけそこんちの子供になりきれるか、本日はそういうゲームをする」
と言い聞かせてある。
嫌われないよう同じ家に何度もいかないのがコツね。
子供のいない友達が『子供がいるという体験ゲーム』を楽しんでいられるうちはオッケーだろう。
しかし、前出の神林であるが、息子が懐いているのをいいことに、じつはもう三回もやつの家にお世話になってしまった。群馬にあるやつの実家にまで世話になった。
そしたら最近、やつはこんな悲しい独り言をこぼしたではないか。
「あたしは子供を産まないだろう。産まないに違いない」
しぇー、あたしら親子はやつをそこまで追い詰めておったのか。
神林のお父さん、お母さん、ごめんなさい。孫の顔を見ることを、とっても楽しみにしていたんだとか。
てか、「室井さんとこの親子を見てたらうちの娘もその気になるかも」なーんていってたんだよな。どうしよ、反対になっちまったよ。
ユウタじゃ駄目かしら。ユウタならいつでも貸します。無料のレンタル孫として。
とここまで書いていたら神林がパソコン画面を覗き込んで、
「育児放棄をここまで大胆に告白するなんて、すげぇ女だ」といった。
すごいというのは、そこじゃないだろ。さっきとはまったく違う原稿を、すらすらもう一本書いたことだろ。
さっ、二本も原稿を書いたら腹が減った。これから食事を作るのは面倒だし、昨日は寝てない。今日は誰のお家にお邪魔しようかしら。あっこの家は飯がうまいし、あっこの家は旦那が息子を風呂に入れてくれるし……。そうそうおまえは巨乳が好きだっけ。なら、あの女の家か。
いくぞーっ、息子よ! パジャマと歯ブラシ用意しろ!
2006 08 14 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 生理痛と結婚 >
8月2日 10時
生理痛が酷い。
こんなに辛い生理痛を味わったのは、はじめてのことかもしれない。下痢のような痛みが四六時中つづくんだから。
全身がばらばらになりそうなほどだ。熱も出てきたのかもしれない。関節という関節が、腫れている様子。
そういや母親の生理があがるとき、おなじようなことをいっていたのを思い出した。
まさかね。三十六歳であがるってことはあるまいな。
でも、それならそれでいい。
もう痛みから解放されたい。
昨日は友達を知り合いの男友達に紹介する約束をしていた。身体の調子が悪いから別の日に、とも思った。
けど、あたしも、友達も、男友達も暇な日なんて滅多にあるもんじゃない。
あたしは蛇女のようにズルズル床を這いまわり、着替えをすませた。そして、ボーイフレンドのAくんを呼び出し、待ち合わせ場所に連れてってもらった。独りじゃ歩けないほど痛いんだから。
待ち合わせの和食屋では痛み止めが効いていたのか、普通に話しをすることができた。
しかし、二人と別れて家に戻ってからが大変。体調の悪さから、ゲロゲロ嘔吐した。やはり蛇女のようにトイレまで這っていって。
便器にしがみつきながら、Aくんを呼んだ。ベッドへおんぶして連れていってもらった。
眠るまでお腹をさすってもらう。
こういうときだ。結婚という二文字が頭に浮かぶのは。
Aくんに結婚しようといわれ、断ったのは最近だ。
「あたしは結婚不適格者。息子と二人、最小単位の家族でいいの」
とかなんとかいって断ったんだった。
……よかったのか、それで?
難しい問題だから体調が良くなり次第、もう一度、考えてみようと思う。
う〜、腹が痛ぇ。
2006 08 02 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 絶不調 >
7月27日 12時
長編小説の出だしを書きては直し書いては直し。ようやく十枚ほど書き上げた。五日もかかって。
こうも絶不調だと、なにもかもが厭になってくる。
素麺をめんつゆにつけるのだって、面倒くさいわ。あんなに大好きなバーゲンにだって、いっていない。
じゃあ、なにをしているのかというと、夕方から外に出て安酒場で飲んだくれておる。
家にいるとどうしてもパソコンが目に入るからさ。
でも、ただ飲んだくれているわけじゃないよ。飲みながら構想を練っているんじゃ。
誰も信じちゃくれないが……。
神林がインタビューの仕事をばんばん入れる。やついわく、あたしが執筆に精を出さないので、なら日銭の入る仕事を……ということらしい。室井事務所の存続のために。
そんなにやばいのか、うちの会社は。
たしかにマンションを買って一文無しになってしまい、自転車操業だとは聞いていたけど。
大丈夫だろ。たぶん。きっと。
……たぶんじゃ不味いんだよ。そんなことわかってる。
けど、どうしようもないじゃんか。そんな時だってある。この仕事を十年もつづけていたら。
って、よく考えたらあたし、ホラーのゲーム小説を上梓したばかり。けっこう働き者だよな。
あ〜あ、早く原稿料が入ってこないかな。
金がないと落ち着いて原稿が書けん。
話しは変わって。
お台場の映画王、佐々木恭子ちゃんに誘われて、22日に出演します。あたしのお勧め映画は『愛してよ』という邦画。
お暇な人は遊びにきてね。
2006 07 27 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 新居にて >
7月17日 18時35分
ただいま。モルディブから帰ってまいりました。
帰国してからというもの、一週間、原稿を書かなかった。
怠け病というやつなのかもしれない。でも、それだけではないはずだ。
引っ越ししてから独りで家にいたことがない。
新しい我が家には誰かがいる。用もないのに集まり、だらだらと酒を飲んで泊まっていく。
おかげで買ったばかりの巨大なホットプレートが大活躍だ。鉄板にも鍋にもなる、タライのようなそれが。
餃子、水餃子、タイスキ、豚しゃぶ……。
夕方になるとホットプレートを囲み、みんなで酒を飲みながら飯を食う。
合宿所のような我が家。
深夜を過ぎれば喧嘩もはじまる。
ボーイフレンドのAくんは集まる人間の中ではいちばん年下だが、酔った勢いもあり、とうとうこんな爆弾発言をした。
「おまえらそろそろ帰れ。たまには帰ってくれ」
だよな。気持ちはわかる。
せーっかく、新しいベッドなのに、テレビ付きのお風呂なのに、夜景の綺麗なバルコニーなのに、みんながいたらエッチできないってんだよ。
しかし、そんなことで怯むような女友達ではない。
女の同僚が適齢期になると去っていく中、ずっと職場に居座りつづけた気骨のあるやつばかりである。外に出れば、顎でAくんぐらいの男をこき使っているだろう。セクハラの一つや二つは日常茶飯事といったところか。
代表して秘書の神林が叫んだ。
「なんだと、こらっ。おまえが帰れってんだ!」
「おまえが帰れ」
「いいや、おまえが帰れ」
しばし言い合いになる。見かねてあたしは口を挟んだ。
「あのー、ここはあたしの家なんですけど」
「そんなこと知ってます」とAくん。
「当たり前だろ」と神林。
ほんとうにわかっているんだろうね。
そろそろ真面目に仕事をしなくちゃならない。観念して今日は朝から原稿を書いている。特注して作った大きな仕事机に向かって。
なぜかあたしの隣には秘書の神林が、向かいにはAくんが。そして、三人はそれぞれのパソコン画面を見つめ、各々の仕事をしている。
あたしは仕事を終えたら、缶ビールを飲むつもりだ。それを楽しみに、それを励みに頑張っている。
……ねえ、変なことがあったよ。あたしより先にビールを飲みだしたやつがいるよ。てか、二人のパソコンの脇にちゃっかりとビール缶が置かれてあんじゃん。
もしかしてそれは、あたしの冷蔵庫に入っていた、あたしが買ってきたビールではないですか。
とりあえず、この二人が家に居座りつづけても、気軽にトイレでうんこできるのだけは幸いだ。
【おまけ】
マネージャーの阿部くんからの引越祝いはビデオであった。『合コン! 熟女VS多国籍軍』『人妻専科』の二本。
買ったばかりの液晶テレビの大画面で、いちばん先にそれを観るはめになるとは。
天才占い師だって、予想できないことだろう。
2006 07 17 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< モルジブに行って来ます >
7月2日 5時
引っ越し、無事に終わりました。
どうなることかと思っていたけど、よかった、よかった。
きれいな理想通りの部屋。これから先、作品の中身も変わったりしてね。期待してくれ。
新しい部屋に関しては、また後日報告するわ。写真つきで。住み心地の感想も。
そのとき引っ越しの様子も詳しく話そう。B型女、B型男ばかり集まった引っ越し作業がどんなもんか。
毎日、労いの意味を込め宴会。せっかくみんなで集まっているんだから、そりゃあ飲みたくもなる。潰れるまで飲んでしまう。
そして雑魚寝状態となり、翌朝、誰からともなくむっくり起きあがり、作業に取りかかりはじめる。
酒が抜けきってないから、みんな無言。ゾンビのようになにも考えず働く。もくもくと。
引っ越しを手伝いに来てくれたみんな、ほんとうにありがとう。
みなさんのおかげで、安心して夏休みを取ることができそう。
今日はこれから九州出張。そして明日から夏休み。楽しみにしていたモルディブ旅行。
引っ越し作業が終わらなかったら、どうなっていただろう。
息子が楽しみにしている旅行だもの、モルディブへはいったろう。
けど、でっかいトランクを引きずって帰国し、帰るところがないってのは辛いぞ。前のマンションは解約してしまったしな。
いつもギリギリだ。
原稿も締め切り間際、ギリギリで終わらせ、
引っ越し作業も予定ギリギリで終了。
そして、今日の九州出張も、考えてみたらギリギリなのではないか。
アクシデントで飛行機が飛ばなくなったら、新幹線を使う。大雨で新幹線が止まりでもしたら、レンタカーを借りてでも帰ってくるつもり。
最愛の男の誕生日プレゼントとして用意した旅行だからさ。
とにかく、みなさん、いってきまーす!
2006 07 02 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< わが儘かしら >
6月26日 午前10時。
金沢に来ている。講演のお仕事があって。
これから本番。
六百人入ることのできる会場には、千人の応募があって、六百五十人ものお客さんが来てくれるそうだ。
あたしなんかの話を聞きに、こんなにも多くの方が集まってくれるなんて。幸せだなぁとしみじみ思う。頑張らねば。
そういえばプロになってはじめて書いた小説の主人公は、金沢出身の女の子であった。
以前テレビで観た金沢の町並みがとても印象的であったためそうした。
控え室のホテルの窓から風景を眺める。金沢、いいところな気がする。
なぜいいところだと断定していえないのかというと、昨晩から金沢入りしたというのに、ちっとも遊んでないからだ。
思い入れのある街だし、ぜひその夜を満喫してみたかった。
が、それは無理。
思いっきり、思いっきり、仕事を抱えているんだもん。今回の出張にもマックを持ってきた。昨晩は徹夜だよ。
今週のあたしは悲惨だ。
月曜日……金沢講演で夜帰宅。
火曜日……特ダネ! その後、雑誌のインタビュー二本。
水曜日……大阪出張。五時のニュースに出てそのまま大阪泊まり。
木曜日……大阪講演。
金曜日……引っ越し。
その間に、六本も原稿を書かねばならん。
その上、来週から早い夏休みと取ってモルジブに遊びにいく。
引っ越し作業と、旅行の前の原稿の書きため作業を、同時並行でやっているのだ。
し、死にそう。
早く青い海と青い空のもと、真っ裸になって遊びてー。もちろん、仕事のことは忘れて。
……とかいってるけど、遊びにいっても三日で飽きるんだ。仕事がしたくなるあたし。
我が儘ってやつですか?
2006 06 26 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 続・憎い神林 >
6月5日 午後8時
まず、お知らせ。
飲み友達でローソンを経営しているまことが、勝ちどき2丁目店、茅場町店でアルバイトを募集しています。
時給は900円から。深夜・早朝手当あり。何時でもOK。
100日間勤務で、
女性はホストクラブ招待。
男性はキャバクラ招待。
なお、それに関してはまことの奢りで室井も参加します。
まことは身長180センチ、顔もキムタクに似てないこともない。
やってみてもいいかなぁ、と思われる方は気軽に、
3665ー4163
まで電話を。
まことと直接面接をしてください。
まぁ、まことの店なんてどうでもいいんだけどね。最近、恋をしてるからまことと飲みにいく暇もないし。まことも店に出ていて暇がないみたいだけどさ。
週末は息子のものだから、夜、ちょこちょこ出かけてデートしている。
だから仕事がさっぱり進まない。しょうがないよね。
締め切りは守らなきゃならないけど、あたしは物書き。ドキドキしたりワクワクしたりすることだって、良い作品に繋がるはずだ。
工場長じゃないんだから、一日何時間机に向かっていくつ仕事をこなすって問題でもなかろう。
が、そういうことがわからない無粋なやつがいる。
前回にひきつづき秘書の神林ね。今、机の向かいに腕を組んで座っている。なぜかノースリーブ一枚で太い腕をさらして。
目があった。神林がいう。
「もう書けたか!」
書けるわけねーだろ。威圧的なおまえに見張られて。あたしはデリケートなんだから。
あの女、最低なんだよ。あたしの男に、
「慎重すぎるデートはいかがなものか」
などとメールを送ってやんの。
彼と知り合ってから、高校生のようなデートをくり返しているあたし。
神林がいいたいのは、そんなママゴトのような恋愛をしているうちは作品として消化できないってことだろうけど、小説を書くために恋愛しているわけじゃないってーの。
やつの恋愛は、好きになった→好きになられた→じゃあ、やる→やりまくる→あきる→中年夫婦みたいになる→お仕舞い。ってな大味なものなような気がする。神林がセックスぅ? 気持ち悪いから深くは聞いたことがないが。
あたしはそういうのが厭なの。できるだけドキドキ・ワクワクの時間を引き延ばしたい。恋愛において、それがいちばん楽しいんだから。
……でもな。少しねかせたら素敵だった恋愛は小説に生かすだろうな。膨らませてこねまわして。
何本も何本も書いていると、始終ネタ不足に陥ってしまう。あたしも必死よ。
しっかし、こんなこと書いていいのかぁ。今、あたし、自分で自分の首を絞めた?
思うに書かれるという危険性があるから、それなりに綺麗なのに(標準以上)男が寄ってこないんだろう。
書くなっていわれたら、書かないのに。
……なーんて嘘かも。
【おまけ】
神崎じいのいけず。
こっちに出てきてて、神社に遊びいくならあたしも誘え。
次回は乃木神社ね。
アイラブ乃木希典だから。
バカーッ!
2006 06 05 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 憎い神林 >
5月31日 午前7時
水曜は大阪出張の日。
向こうへは三時に着けばいいので、ゆっくり起きてもかまわない。
しかし、そうもいってはいられない。出かける前に二本原稿を書かねばならないからだ。
昨夜の酒が残っていて、少しだるい。
目を覚ますため、熱い風呂に入る。汗が焼酎の匂いだよ。
お腹がぐりぐりと痛むのは、酒のせいだけじゃなく、夕飯に食べた激辛ラーメンの副作用かもしれない。
体調は良いとはいえない。けれど、早起きして仕事をしなくちゃならない。非常に切ない。
ところで、昨晩一緒に酒を飲んだ秘書の神林は、まだ寝床の中にいる。
あたしが六時起きをして泣きながら原稿を書いている間、やつは布団にくるまれて幸せな夢をみている。
なんだか憎い。
そういえば昨晩、酒盛りをしてしまった理由は神林にあった。
仕事を終えたあたしと神林は、最近通いつめているラーメン屋へ夕飯を食べにいった。向かい合わせでテーブルにつく。
そのときあたしは気づいてしまった。神林があたしのお気に入りのトレーナーを着ていることに。
あたしはいった。神林の胸をみて。
「あんた、それ……」
神林はトレーナーを引っ張り、
「ああ、これ? 引っ越しの作業するのに服が汚れると不味いから借りたんだ」
「それ、あたしのお気に入りなんだけど」
「え? こんなボロいのが?」
「わざとそういう加工してあるんだ。高いんだ。いやだ、胸にプリントされてる寅の顔が、楕円に伸びてる」
「伸びてねぇよ。もともと楕円の顔の寅だった」
「違う。おまえがデブだから伸びた」
「ケッ。うるせぇな。どうでもいいじゃん、そんなこと」
「あたしはおまえのそういうところが我慢ならない」
ラーメン屋での話はそこまでで終わった。しかし、事務所に戻ってからもあたしはネチネチと神林に絡みつづけた。神林の不遜な態度にむかついて。すでにラーメン屋で飲んでいたからね。
「それとこの際だからいってしまうが、うちのウォシュレットは使わんように。たまに便器の奥が濡れているから、おまえがうちのウォシュレットを使っているのはバレている」
「はあ? 事務所でウンコしちゃいけないってか?」
「ウンコはいい。しかし、ウォシュレットはいかん。あれは個人で使うものなんだ。あたしの考えではそうだ。水圧で落ちた残りカスがシャワーの先についていたらどうするよ? うちのウォシュレットはあたしと……そうね、佑歌までだ、使っていいのは」
「意味がわからん」
「歯ブラシを誰かとまわして使うのなんて、いやだろ」
「ウォシュレットと歯ブラシを一緒にされてもね」
神林はふふんと笑った。ああ、むかつく。
「あれは、マイ・ウォシュレットなの!」
最後は大声になった。大声で怒鳴ったら、神林も大声で怒鳴りかえしてきた。お互いにストレス発散か。
収集がつかなくなり、ライターの高崎を喧嘩のジャッジ役に呼んだ。
そして、飲み会になった。翌日、早起きして原稿を書かなきゃならないっつーのに。
……と、ここまで書いて、一時間が経った。神林が目覚める様子はない。微塵もない。
やたらとでかい声で、寝言をいった。
「社長、いってらっしゃい!」
憎い。マジで。
2006 05 31 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 苦しい引っ越しと幸せ >
5月22日 午前3時
新しいマンションへの引っ越しは六月三十日に決まった。
間取りから水まわりまですべて自分好みに改装したので、思っていたより時間がかかってしまうみたいだ。
引っ越しセンターからもらった段ボールに、細々としたものを少しずつ詰めていっている。
少ずつでも作業をしているはずなのに、ぜんぜん進まないのは、明らかに物が増えているからだろう。
たとえば可愛い食器が目に付くと、つい買いたくなってしまう。部屋に合う素敵なガウンを探したくなる。リネン類だって新しいものに替えたい。開けていないデパートの紙袋が確実に増えている。
とうとう秘書の神林から叱られた。
「引っ越しの期日が近づいてきているのに。やる気、あんのか!」
……やる気はある。でも、できない。引っ越し作業、それはあたしが最も苦手なことだろう。
今、考えていることは、断った単発の仕事をやっぱりやらせてもらうことにして、その分のギャラでバイトを雇ったらどうかということ。
そうなのだ。もう心の中では、引っ越し作業を放棄している。
そういえば家政婦さんを雇ったとき、まわりのみんなから、
「家政婦さんを雇う費用のぶん仕事を減らしたらいいのに。なんのために働いてるんだか」
というようなことをいわれた。
そういうことじゃないんだけどね。
仕方ないじゃん。ほんとうに、本気で、片づけが苦手なの。
片づけをしなきゃと考えるだけで、体調が悪くなる。
なら、元気に仕事をしていたほうがいい。片づけを一時間するぐらいなら、仕事を五時間していたほうがマシだ。
話は変わって。
すっごい発見をしちゃった。
といっても、普通はみんな知っていることなのかもしれない。あたしだけが知らなかったのかも。
恋愛って心の侵略試合だと思っていたけど、どうも違うみたいだ。
相手が試合を望んでいなくて、ただ仲良くしたい、そういう人であれば、一人で槍を持って立っているのが馬鹿らしくなる。
あたしは馬鹿らしくなったもの。むちゃくちゃ戦闘態勢でいる自分を、とても格好悪く思った。
駆け引きなく好きだといってもらえることが、こんなに幸せなことだったとは。
2006 05 22 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< スポンタ通信へ >
5月11日
スポンタ通信へ。
はしたないと書かれて厭なのは、自分とおなじくと書かれたからだ。あたしははしたない人間だけれど、おまえみたいなはしたなさとは全然違う。一緒にするな。
性別のためかキャラクターのためかと書いているけど、おまえは差別主義者か。
自己肯定しっぱなしなのは自分だろ。よーく、胸に手を当てて考えてみなよ。言葉を巧みに操つってるつもりになって、逃げるんじゃないよ。
一見、小難しそうなことをいってるけど、結局は「僕ちゃんをもっと認めてよ。見てよ」ってことなんじゃないの。
正直に自分の感情を晒せなくて、なにがプロの物書きか。
小賢しいわ。
追記
座持ちの良さであたしが生きてきたってどういうこと?
悪いけど康さんのことについても、あたしは一度も仕事に利用したことはない。というか、まわりの人たちに「ダーティー」なイメージがつくから仲良いってことをいうなっていわれてるぐらいなんだ。
あたしのまわりの誰かに聞いてみなよ。あたしがそういう真似、したことがあるかって。
本業の作家稼業にしても、文壇政治なんちゅうもんとは無縁なんだよ、編集者や評論家ともほとんど付き合わないから「付き合いの悪い作家」で通ってるんじゃ。テレビにしてもレギュラー番組のプロデューサーなんかと飯もほとんど食わない。
何も知らないくせに、 貧困でステレオタイプな想像力で、物を書くんじゃない。それでもプロか?
あんたってほんと、差別主義ね。
あたしが女だからそう思うんだろ。
ほんと侮辱もいいとこだよ。
謝罪しろよ、きちんと。
2006 05 11 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 飲むぞーっ! >
5月1日 午後一時
みんな、ゴールデンウィーク、楽しんでいるかい? なんでも今年のゴールデンウィークはここ数年の中で、いちばん海外に出る人が多いんだとか。
ま、あたしには関係ない話だな。
原稿の締め切りが9日に集中しているでやんの。編集様が長期休暇を取るために。
くそー。尻が痛い。もう何時間机に向かっているんだか。
7日の飲み会だけが楽しみじゃ。
飲み会、このブログに書いたあたしの友達いっぱい呼んだから。ぎゃあぎゃあみんなで話をする楽しい会にしようね。
飲むぞ、飲むぞ、飲むぞーっ!
2006 05 01 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< ノリノリのあたし >
4月25日 午前4時。
あたし、今、すっごく気分いいんだぁ。
寝不足気味だけど、興奮していて眠れないぐらいに。
というのも、デカイ仕事が昨日で完了したの。
マンションを買ってしまい無一文に近い状態になってしまったあたし。そんなあたしを見かねて、秘書の神林が仕事を決めてきた。
この夏、配信のゲーム小説。しかも本格ホラー。
「ホラー? たしかにギャラは抜群に良い。でも、あたしゃ、本格ホラーなんて今まで書いたことがないよ」
そう文句をいうと、神林は、
「無一文が仕事を選んでいる場合か。事務所を持ち直すためにも、しばらくはギャラで仕事を選んでいくからね」
とのたまった。そして、
「室井、おまえは天才だ。おまえなら出来る。出来そうもない仕事を、あたしが決めてくるわけがない」
かなり調子がいい。
「いいや、おまえは自分の給料のことしか考えていない。それと社員旅行の行き先しか」
ブヒブヒ……。
けど、受けちまったもんはしょーがない。ふて腐れながら、仕事に取りかかることにした。
しかしこれが……、書きはじめたら最高に楽しいでやんの。
まず書きはじめるにあたって、『怖いもの』というテーマで、神林と酒を飲みながら何時間も何日間も語り合った。
「文章を読んで進んでいくゲームだから、文面には拘らないと」
「嬰児なんて怖くない?」
「惨殺ってのも怖い」
「主人公は全体的に色素の薄い美少女がいいな」
「気味が悪いぐらい若く美しい熟女は?」
「おお、それも怖いかも。土着の宗教なんかも怖いぞ」
「理解できない殺人事件とか」
「いいぞ、いいぞ」
で、なんとなくテーマとストーリーが頭の中に浮かんできて、この三日間、ほとんどお籠もり状態、寝ないで第一部を書き上げてしまった。もうノリノリで。
かなり楽しかったんだな、あたしは。おかげで作品自体のクオリティーも抜群よ。
ああ、早くたくさんの人に読んでもらいてー。
余談であるが、ここんとこ激辛料理ばかり食っている。
『怖さ』を求める人間は、刺激を求める人間なのね。
なんてこと、ふと思った。
2006 04 25 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 無駄の中の大事 >
4月19日 午前11時半。
大阪行きの新幹線の中でこの原稿を書いてます。今日は一日、マネージャーの阿部くんと一緒。
この四月からマネージャー見習いだった阿部くんの、マネージャー昇格が決まった。そして十日ほどの引き継ぎの後、やつはあたしの専属マネージャーとなった。
事務所内、数いるマネージャーの中、よりによって阿部公があたしの専属になるとはね。
直情型で馬鹿、でも真っ直ぐで素直な阿部公は可愛い。
しかし、ペアを組んで仕事をするとなると、いいんだか悪いんだか……。
元船乗りだった阿部公は、会社面接の日、役員連中全員が反対する中、社長の、
「船乗りに悪いやつはいない」
という鶴の一声で入社が決まった。
よくもまあ、眉のない見た目バリバリヤンキーの阿部公を入れたもんだ。社長ってば博打好き。
今では会社命令で眉もあるし、スーツを着てネクタイもしている。が、中身はすぐに変わらないよ。
今日は東京駅で阿部公と待ち合わせをしていたんだが、あいつ、駅員と喧嘩をしながらあたしを待っていたぞ。いつものことでもう驚かん。
そういえば以前、こんなこともあった。阿部公と馴染みの喧嘩バー(某文壇バー。十二時を過ぎると誰かが喧嘩しておる)にいったら、変な占い師に絡まれた。
「あんた、誰? で、いくらぐらい稼いでんのさ」
とかなんとかいきなりいわれた。
酔っぱらっているからとはいえ、初対面の人間に年収を聞く下品さには呆れたが、酔っぱらっているからこそ、それがそいつの本性なんだろうと思った。
(どうやってこいつを倒すか<喧嘩バーには喧嘩をしにいっているんで>、一発で気持ちを抉る言葉はないかなぁ)
と考えた瞬間、阿部公はすでに立ち上がっておった。
「おい、こらっ、失礼じゃないかっ」
えーっ! 今から楽しくなってきそうだったのに。……モジモジ。
それに立ち上がるってどうかなぁ。一応、文壇バーなんだから、インテリらしき人間が集う。
誰も腕っぷしで勝負しようとしてないだろうよ。馬鹿とか、つまらないやつ、といわるのが最悪と思っている人間が集まってんだから。
嫌味には、さらなる嫌味を返すのが正しい。そいつの存在価値、すべてを否定するぐらいの。立ち上がれないくらいの。
あたしは阿部公に耳打ちした。
「立ち上がったら負けだ」
でも、それからも阿部公は、占い師の嫌味にいちいちカッときてしまい、その都度立ち上がっていた。
最後は、あたし、阿部公にいったもんね。
「もう、おまえはいいから。町内一周、走ってこい」と。
で、阿部公が町内一周している間に、リベンジしてやった。
はじめからあたしが相手をしていれば、三十分でキャンといわせてやれたのだ。まったく、手のかかる男よ。
あたしと阿部公って、同じ種類の馬鹿だから困る。
いや、あたしも相当馬鹿だが、十年前の阿部公と同い年の頃は、もっと賢かったような……。
ほんとにこいつがマネージャーで大丈夫か!!
【おまけ】
この話には後日談がある。
あんまり面白かったんで、秘書の神林にこの話をしたら、
「なに? 阿部公は負けたのか」
とやたらと熱くなっていた。
「よっし、今度はあたしが喧嘩バーに連れていったる。で、喧嘩の仕方を教えたる」
阿部公はそんなこと望んでないかも。嬉しがらないかも。と、あたしは思った。けど、一応、神林の申し入れをそのまま阿部公に伝えた。
阿部公の目がギラリと光った。
「あの喧嘩、あのままにしておくの厭だったんスよ。悔しくて。よおっし、リベンジだ。次は勝つ!」
……意気込んでやんの。
そうか、やる気なんか。だったら、あたしも協力してやろうじゃないの。
喧嘩バーに電話をし、あの占い師がやってきたらすぐうちに電話をしてくれるように頼んだ。
阿部公・初の大人の喧嘩相手として、あの占い師ぐらいが丁度いいんじゃないかと思って。
それにしても、中心となる人間によって、その集団のカラーもえらく違ってくるようだ。
同じ事務所の小倉智昭さんのところはゴルフ。小倉さんがマネージャーたちに教えてあげているようで、みんなで仲良く頻繁にゴルフ場へいっているようだ。
うちらのグループは喧嘩。チープでお馬鹿で、居心地が良さそうだろ?
そうそう、ほとんど口うるさくないあたしであるが、阿部公にひとつだけ注文をつけていることがある。小説を読め、と。出張となったら二日も阿部公と一緒にいなきゃならない。小説をぜんぜん読んだことのない阿部公と過ごす二日間は辛そうだ。酒を飲んで朝まで語り合うなんてこと、絶対にできない。
あたしがオヤジ好きなのは、彼らの話は方々に飛んでいて面白いから。たら、れば、の話もイカしている。彼らの青春時代は娯楽が少なく、読書青年であった人が多いからのような気がしてる。
その逆で、最近のしてきた若い政治家やIT関連の若社長にはまったく興味が持てない。彼らって、実用書や歴史書の類しか読んでいなそう。無駄なことを嫌っていそう。
一見無駄に思えることでこそ、大切なことが学べるって知らない。
小説のほかにはそうね、金に余裕があるとはいえないのにお姉さんのいるお高い飲み屋で遊ぶとか、噂されるとそうとうやばい相手を愛してしまうとか(IT有名人が美人タレントと噂になるのは、ひとつの戦略だから)。
無駄なことにこそ、教科書に載っていないような大事なことが詰まっているんだと、あたしは信じているの。
【お知らせ】
『LOVE・LOVE・LOVE』に載らなかったみんなごめんね。なかにはGOODをあげていた人もいるみたいで。
迷って迷って、最終的にあたしが選んだものが膨大な量で、その後は公平になるよう編集者に任せました。
その点の不平不満も、5月7日のロフトプラスワンでぶつけてくれや。あたしも編集者もいるし。神林や阿部公も来るよ。
そうだ。一丁、やつらと公開喧嘩でもやっかな。で、みなさんは両方の言い分を聞いて、どちらかの応援団になるってどう?
イベントの中身をちゃんと考えてほしいとソフトバンクの担当にいわれてんだけど、あたしはみんなと飲み会がしたいだけだったりする。
べつに企画を立てるのが面倒とか、楽をしたいからじゃないよ。みんなと飲みながらわいわい話をしたいだけ。
ロフトプラスワンは六時からです。
六時からずうっとやっているだろうから、ブログを読んでいる人達は気楽に参加してくれや。あたしも気楽にいくからさ。
あ、そんとき、『ママの神様』の感想も聞くかな。みんな、読んでくれた? ぜんぜん感想が集まらなくて、あたし、いじけてしまいそうよ。
編集者が「テレビに出ている室井を見て、あれが室井だと思われているんじゃないか」っていってたけど、ほんとにそうなの?
だとしたら悲しい。
あたしがいちばん大切にしているのは、息子の次に小説の世界。あたしがいちばん評価されたいのは、息子の次に小説の読者だもの。
感想、求む。
2006 04 20 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< あたしの欲しいもの >
4月10日 午後1時
昨日のことだ。机に向かって仕事をしていたら、男友達からやけに明るい声で電話があった。
「株ですげぇ儲けたんだ。ご馳走してやるから出てこいよ」
疲れていたし「いい」とあたしは答えた。
「着替えたり化粧したり、面倒くさい」
「なんだよそれ、辛気くさいな。じゃあさ、なんか欲しいものとかないの。今なら買ってやる。デパートまだ開いてるだろ」
あたしは少し考え、
「ないこともないけど、金でどうにかできることじゃない。デパートにも売ってない」
とつぶやいた。
「ほんとかぁ。こっちはせっかくなにかしてやろうって気分なのになぁ。なあ、いうだけいってみろよ」
「いいたくない」
「いえ」
「いやだ」
「いえってんだ」
男友達はけっこうしつこかった。あたしの欲しいもの……いいたくなかったが口にした。
「たとえば、朝から酒を飲み、男とベッドの中で一日中うだうだしたい。そういう一日が欲しい」
「なんだ、それ」
男友達はいった。あたしはつづけた。
「酒と休日は用意できるから、残りは男だけなんだけど……。すまん、それはおまえじゃない。おまえでは無理」
「こ、こっちだって無理だっちゅーの」
結局、あたしが怒られて話は終わった。
おっかしいよな。奢ってもらえるはずだったのが、なにか買ってもらえるはずだったのが、叱られて終わりってどういうこと?
まあ、疲れててノリが悪かったあたしもいけないんだけどさ。
男友達に「現実を知れ!」といわれた。
「ソープにいけば、おまえより若くて、おまえより可愛い女の子が、三つ指ついて奉仕してくれるんだ」だって。
ってことは、若くもない可愛くもないあたしに、タダでご馳走をしてくれようとした男友達はいいやつだってことになる。謝っておくか。
そう考えて電話をかけ直したが、友達はつかまらなかった。話ながらソープにいくほうが得だと気づき、そっちにいったか。
まあ、それならそれでいい。
と、ここまで書いて、暇だから秘書の神林のブログを覗いてみた。
中国にいって女を抱き機密を話せと脅されて、それを苦に自殺した男の話から、美人局のようなわかりやすい罠にはまる男はおろかだと書いておった。税金で仕事にしにいってるんだから、下半身の欲望ぐらい抑え込め、ってなことが。
違うだろ。下半身の欲望は悪くないだろ。
あたしからいわせれば、それはOK。だって、下半身の欲望がなければ神林もあたしもこの世に生まれてきていないんだし。
買春の証拠さえつかまれていなければ、向こうの警察にも捕まることもない。OK、OK。
悪いのは、脅されてビビること。エッチしている様子がビデオに収められていても、それがなんだというんだよ。
たしかに、それは恥ずかしいことかもしれないが、国益を守ることに比べたら屁みたいな話じゃないか。
脅された時点で、
「どうぞ公開するなりなんなりしてちょーだいな。セックスなんてみんなするだろ。ついてるものも、やってることも、みんなおなじ。どうぞ、どうぞ」
そう笑っていればいいんだ。
エリートはセックスしないってか。するだろ、普通に。妙なプライドを発揮するのが、馬鹿だってんだ。
なのに、神林の日記は、下半身の欲望を抑えられない男を罵って終わっていた。こいつってば、男を知らない。ぐだぐだ十年も一人の男とつき合っているからだろうか。別れて新しいのを見つけるのが面倒だという理由で。
男ってのはそういうもんなんだよ。
うちの息子なんて、はじめて幼稚園にいったその日、園にある配管工の穴すべてに玩具をつめて叱られていた。一日中、水道が使えなかったとかで。
穴を見ると、とりあえずなんか突っ込みたくなるんだね。
そういやこんなこともあったな。実家に帰って、珍しく早起きしたので庭に落とし穴を作ってみた。明らかに罠だとわかる作りなのに、息子は喜んで落ちてたぞ。ぐふふふと笑いながら。
教えた訳じゃないのに、穴が好きってすげぇよな。やっぱ、男ってやつはそういう生き物なんだな。
どんなに出世願望の強いやつでも、どんなに頭がいいやつでも、どんなにズル賢いやつでも、あそこに血を取られる一瞬は馬鹿になる。
いつも思うんだけど、男のあそこって、あんなのでいいのかね。生き物としてあんなに分かりやすい弱点をぶらさげてるなんて。
そもそも男もあたしら女が作ったもんなわけだ。そう考えると、分かりやすい弱点をぶらさげて生まれてきた男らが、とびきり可愛く思えてくる。
だから、どんなに酷い目にあっても、心底、男を憎めないのよ。
追記
ラブレター企画「LOVE LOVE LOVE」(ソフトバンククリエイティブ)の刊行がいよいよ近づいてきました。
ネット書店での予約開始は、17日くらいから21日に配本の予定で、GW前には地方にも届くと思います。
協力してくれたみんなのペンネーム一覧を掲載します。みんなありがとう。載らなかったみんな、ごめんね。でも、みんなで作った本だから。
五月七日、新宿ロフトプラスワンで、打ち上げします(時間など詳細が決まったら連絡します)。本に載った人も、残念だった人も、みんな参加してほしいな。
次の予定も、決めよっか。
掲載者ペンネーム一覧はこちら
↓ ↓
「タイトル」/名前(年齢)/誰に対するラブレター?
「先輩へ」さな(25歳) 前の職場の先輩
「拝啓、旦那様。」米田こずゑ(31歳) 夫への手紙
「hiroへ」shiho(30代もあと少し) hiroへ (リンクがありません)
「前略親父様」シバウニ-ニョ(26歳) 父親へ
「文化アパートの四畳半でキメタイ気分だ」yasubow(62歳) 妻への手紙
「嘘を」洋衣(20歳) 知り合って1年のあなたへ (リンクがありません)
「最初で最後のラブレター」ちぃ(24歳) 初めて愛した君へ (リンクがありません)
「亡くなった母へ」temari(31歳) 母親へ
「これまで以上の時を過ごそう!」ハルク(48歳) 妻へ
「あなたの前では素直になれん。」もちゃこ(24歳) 父へ
「でも好きみたい。」+あこ+(31歳) 自分へ
「正しかった君へ」アカネ(26歳) 振り向かなかった男の子へ
「今更」かさね(24歳) 13歳の時に出会ったあなたへ
「空の向こうのあなたへ」花華(30歳) おばあちゃんへ
「あなたが教えてくれたこと」きみきみ(32歳) 息子へ
「約束」かえる(24歳) 大好きだったアイツへ
「めっちゃスキや」カズ(24歳) サオリへ
「12月10日」弐拾四(25歳) 愛された貴方へ
「たまごパックとたまご」ゆか(25歳) たっちゃんへ
「君を幸せにしたい」聖(44歳) 遠く離れて暮らす息子へ
「後ろの父へ。自慢の娘より」比呂子(27歳) 父へ
「大好きなシバへ」みちっくりん(28歳) 愛するダンナへ
「とりあえず、手紙で。」玲(19歳) 彼氏へ
「It Falls in Love in Blog.」ashes-wolf(20歳) Blogの中で恋をしてる相手・その人へ
「ありがとう。」香(34歳) 別れた夫へ
「父へのラブレター」あなたのイチバンで唯一のバカむすめ(33歳) 13回忌を迎える父へ
「いつかまた会う、私の分身へ」ゆう(45歳) 若くして亡くなった親友へ
「タイムカプセル」ニコ(30代) たっちゃんへ
「裸の王様」粒つぶこ(24歳) 彼氏へ
「アキヒロへ」ユキエ(30歳) 彼氏へ
「君の未来は」MJ(52歳) 当時、高校受験だった息子に書きましたが、結局、渡してません。
「いつ会う?」ば~どまん(?歳) インターネットで知り合い好きになってしまった彼女へ
「ラブホヘアサロン」七海(22歳) たった今サヨナラしたあなたへ。
「ココロの自慰行為」緒川ユウ(24歳) 平たく言うとヤリ友に過ぎなかったあなたへ
「お母さんへ」イチゴジャム(10歳) お母さんへ
「NO.1になれなくてもいい」わこぉ(23歳) 母へ (リンクがありません)
「食卓」本小路(35歳) 忠男へ
「離れて暮らす君達へ」ひーちゃん(35歳) 離れて暮らす2人の子供たち
「業務(外)報告」よいこ(37歳) 会社の上司へ
「この歳になって思う」えみっちぃ(26歳) 亡くなった母へ
「ナイフでぶっ刺して叫ぶ」そばこ(22歳) 大切な大好きな彼氏へ
「見たくないもの/見たいもの」matsu(28歳) Tへ
「関係者各位」Nomenklatura(45歳) 娘と娘の母へ
「一緒に歩いていこう」でこピン(38歳) ダンナへ
「はつこいのかれへ」馨(31歳) 人妻のあたしと結ばれてしまったはつこいのかれへ
「お礼状」ユキ(28歳) 別れたあなたへ
「時のミラージュ」MASAYO(?才) 昔好きだったM・Nさんへ
「予感の朝に。」にな(29歳) 夫へ
「あの夢」安堂流(24歳) 友人へ
「今、伝えたい言葉」hiroki(27歳) 元嫁へ
「あなたが私をあいしてるってわたしはしってる。」まるむし(26歳)息子へ
「最後の修行<ラストページ>」ウルトラヤース(45歳) ヨウヘイへ(息子)
「片思いの貴方へ」まあくん(34歳) 中学の同級生へ
「心の中だけでこっそりと」としちゃん(年齢はヒミツ) アルツハイマーを患っている母へ
「父上、天国に行ってから聞いてください」yonny(34歳) 父へ
「でもよ」松雪 凪(35歳) 両親へ
「未来のあなたへ」びわこ(27歳) 未来の私へ
「思いきって告るぞ」コウタロー(48歳) 愛しい夕(ゆう)へ
「これだけはまじめに聞いて」あき(22歳) 付き合って3年目になる彼氏へ
「微妙な距離感」一学生(26歳) 研究室の秘書さんへ
「ありがと」ゆうこ(21歳) 元彼へ
「あの子のことが好きな貴方へ」あおい(25歳) あの人へ
「写っていたのは…恋心」love31happy(32歳) 大好きだったKさんへ
「原稿用紙のラブレター」ほおり(35歳) 高校時代の恩師へ (リンクがありません)
2006 04 10 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< だらしな女に囲まれて >
4月4日 1時。
テレパルの対談の仕事で、東京ヒルトンホテルへ向かった。対談相手は可愛らしいほしのあきちゃん。
あきちゃんに不快な思いをさせてはならんと、夜に一度風呂に入っていたが、朝もう一度シャワーを浴びた。
洋服も以前スタイリストの姉さんから選んでもらったもので、バッチリ決めた。
なのに、あたしを囲む人間のだらしなさはなんだろう。
まず、ライターは十五年来の腐れ縁の丸山だ。
前日の電話で「男問題で、ブルーなの」とかほざいておったのは知っていた。だからかよ、全身黒ずくめ。でかい眼鏡。殺しやのような出で立ちであった。やる気ゼロって感じだ。
そして、カメラマンは村尾。丸山と村尾とは毎年一回海外旅行にでかける仲だから、やつがいかにだらしないかは知っていたつもりだ。
でも、今回はさすがのあたしも驚いた。
やつは、ジーンズの尻のところに紫色の布をぶら下げておった。紫色でヘビ柄の布だ。
ハンカチ? スカーフ?
腰に巻くならわかるけど、尻にぶらさげてるのは変だって。いってやろうと思ったが、仕事中は黙っていた。
仕事が終わり、
「これ、変だよ」
とあたしは軽い気持ちで布を引っ張った。そしたらびっくり、なんとそれはパンツだったのだ。
昨日もそのジーンズを穿いていて、昨夜パンツと一緒に脱いだらしい。で、今朝もまた穿いた。パンツのことは忘れて。
(こんな趣味の悪いパンツ、いったいどこに売っているんじゃ)
すっごく聞いてみたかったが、聞けなかった。さすがの村尾も、真っ赤になっていたもんな。
そしてそして、対談が終わる頃、
「おつかれさまです!」
そうでかい声で部屋に飛び込んできたのは、でかい図体の秘書の神林だ。こそこそ入ってくるならまだ可愛いものを。
こいつは毎日深酒するから、早起きできない。いつも重役出勤ならぬ、オーナー出勤だ。午前中、出社するなんてことは、まずない。一時出勤、二時出勤は当たり前。
本人曰く、
「そのぶん、夜まで働くからいいだろ」
まあ、そうなんだけど。東京のど田舎から出てきて、仕事を終え、繁華街で酒を飲める店が開く時間を見計らっているような……。
今日の出勤は十二時。早いほうだ。
対談の仕事は午前中で終わり、お昼から出版社の担当編集と打ち合わせもかねヒルトンで飯を食う約束をしているからね。
「なに食ってもいいんだってよ。××社って太っ腹だね」
やつはそれを楽しみにしておった。だからやつとしては早い十二時に現地へこれたのだろう。
その日は夕方から、やはり出版社の方に呼ばれ、会席を食いにいくことになっていたし。
ホテルでの飯、会席料理。ゴージャスな飯をご馳走してもらえるのは、あたしの秘書の特典のひとつかもしれない。いいよ、神林も楽しんで。
……いや、いいのか? だってこの女、ゴージャスな飯を食いにいくような格好をしていない。
ジーンズはいい。でも、スッピンってどうよ。髪もちゃんと梳かしてないようだ。
何度も何度も注意し、呆れ果てもういうのは止めていたのだが、あたしはいった。百五回目くらいだろうか。
神林は悪びれる様子もなくにこやかな笑顔で、
「でも、飯には間に合った。やったー!」
だれか、こいつをどうにかしろ。
腹には良い具合に脂肪がたっぷりついているから、焼いて食ったら旨いかも。化粧してないから、すぐに調理できるよ。
2006 04 04 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 喧嘩の後に残るもの >
3月28日 午前4時
先週、イライラしているって書いたけど、イライラしている人は、あたし以外にも案外多そう。
だけど、それを人にぶつけるというのはどうだろう。ぶつけられた方はほんとうに嫌な気分になるものだ。
あたしは喧嘩早い。瞬間湯沸かし器のように、頭にすぐ血が上る。
「今、あたしをすっごく侮辱したね」とか、
「今、とっても嫌な気分になった」とか、
とりあえず頭にきたことを相手に伝えてから、その後、理由を説明していた。
でも、このやり方はいけないのかもしれない。先に否定されたら、その後いかに自分は正当であるかを訴えても、相手はあたしに嫌悪の感情しか抱かないだろう。
ほんとうのことをいえば、頭にきたときに頭にきたと相手に伝えず、だけどそれから陰にまわってジクジクと相手の悪口をいうような人間は好きじゃない。
けど、主張も正義もないくせに、八つ当たりもいいとこで喧嘩をふっかける人間はもっと嫌いだ。親元でもう一度、子供からやり直せと思う。
あたしがこんな話をするのには、理由がある。
先日、息子と映画にでかけたら四十歳くらいの男に喧嘩をふっかけられた。映画を見終えて劇場から出たとき、あたしたち親子の隣に座っていた男にいきなり肩を掴まれたのだ。
男は怒鳴った。
「おい、おまえら。おまえのガキ、どうにかしろよ。おまえ母親だろう」
あたしははじめ、男がなにをいわんとしているのか意味がわからなかった。
映画は『ドラえもん』で、子供連ればかりだった。泣いている子供、劇場内を走り回っている子供、その中でとりわけ息子がうるさかったとは思えない。恐竜が出てきたとき、その名前をしゃべったくらいだ。
テラノサウルスが出てきたとき「あ、テラノ」とつぶやいた息子に、その男が身を乗りだし人差し指を立て「シーッ」とやっていたのは知っていたが、その後、息子は静かになった。テラノが出てきたのは、そんなに後のほうじゃない。
それから男は、寝てしまった。自分の息子をかまうことなく。男の子供は、ゼンマイの玩具で遊んでいた。もちろん、あたしは注意したりしない。そのぐらいのことで。
だから、男に怒鳴られたときあたしはいった。
「ふざけんじゃないよ。あんたのうちの子だってうるさかったろう。だいたい、あんた寝てただろ」
そしたら男はパンフレットを持った手を振り上げた。そしてあたしの帽子を飛ばした。
あたしはこういう男を絶対に許せない。大きな声を出したり、手を振り上げれば、女は黙ると思っている。
警察を呼んでもらった。なにがなんでも、男の言い分に正義がないことをわからせてやりたかった。
警察をまじえての話し合いは、二時間に及んだ。
途中、男が、
「子供が可哀想だから、女房を呼んで引き取りに来てもらう。そのぐらいいいだろう。子供の前でこういうことは……」
とかいってきた。よくいうよ、と思った。子連れのあたしにわけもわからぬ因縁をつけてきたのはそっちじゃないかと。
男の子供がずっと泣いていて可哀想だった。きっとやつは家でも気分で怒鳴ったりしているんだろうと安易に想像できた。
彼の子供は帰して、でもあたしは息子と一緒にいた。誰かに頼めば迎えにきてくれるだろうとは思ったけど、あえてそうした。
男の怒声に少しだけ涙ぐんだ息子だけれど、手を握って「泣くな」といった。泣くのは向こうなんだからと。息子は泣かなかった。
男は子供が帰った後、謝ってきた。
「自分は喧嘩っ早くて、始終、まわりとぶつかっているんです」
といってきた。あたしは、
「あたしもだ」
と答えた。
あたしもよく喧嘩する。でも、自分のいったことに責任は持つ。売った喧嘩に意味がある。だから、自分が間違っていたら、即座に謝ることだってできる。
男のいっていることは理由にならない。
そんな説明だけじゃ許せない。許すつもりもない、あたしはそう警官にいった。
「今までは、誰かれとなく喧嘩を売ってそれでまかり通っていたのかもしれないけど。でも、あたしはきちんとした謝罪がないと、しかも男が納得し頭を下げないと、絶対に許さない。あたしは今回の事件を痴漢にあったようなものだと思っている。公衆の面前で怒鳴られたり手を上げられたりして、あたしは辱めを受けた。これから先、男がおなじような恥ずかしい真似を他の女にしないように、徹底的にやってやる」
そう興奮していったら、お巡りさんに窘められたけど。「あのー、こんかいの事件は痴漢じゃないんで」って。しかし、あたしにとっては同罪だ。
結局、男に住所と名前と職業を述べてもらい、謝罪させた。男は分野は違えど同業者だった。
ふつう、物書きは物事に対する意味や理由を大切にする。わけがわからない。そこらへんをじっくりと聞いてみたかったが、息子が、
「おじちゃん、謝ったんだもん。悪い人じゃないよね」
とつぶやいた。
こいつは最高だ。あたしの神様だ。
視点が目の前の憎い男から、はるか頭上の彼方になった。あたしら親子と男と警官を、落ち着いて眺められるようになった。
警察が入る前、相当、男と怒鳴りあって、その中で男の調子に合わせ、
「おまえんとこのガキだって」
といってしまったことを思い出した。あたしはその点だけは、男に謝った。
「売り言葉に買い言葉で、あなたの宝物をガキといってしまって悪かった。ごめんなさい」と。
そして、家に帰って、考え込んだ。
今回はあたしが正しかった。でも、今回以外のあたしのしてきた喧嘩は正しかっただろうかと。
もしかすると、あたしに言い分があるように、相手にも言い分があったのかもしれない。
はじめに怒りの感情をぶつけるあたしに押され、相手がそれをいえなかったなんてことはなかっただろうか。
あたしはルール違反を犯してないか?
大人しい人間なら萎縮し、なにもいえなくなってしまうかもしれない。それに、その場でいえなかったから、悪いということでもない。だって、人それぞれ性格が違う。
そういった喧嘩の後、残るものは鬱屈した憎しみだけだ。それこそ意味がない。
男のことを考えると、自分のことを考えてしまう。自分のことを考えると、男のことを考えてしまう。
男は最後に、
「後日、きちんとした形で謝罪をしたいのですが」
といっていた。あたしはそれがどんなことか想像もつかないので断った。
けど、それから数日経って、あることを思い出した。あたしの先輩が男の専門分野で、書き手を捜していたのだ。
恩のある先輩だし、最高のものを書いて、それを謝罪としてもらいたいと思った。
けれど、調べてみても仕事の依頼先がわからない。もし、これを読んでいたら、連絡をいただきたいと思う。
2006 03 28 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< あたしのイライラの原因 >
もしかすると更年期障害かもしれない。きゅうにイライラするし、きゅうに死にたいほどの孤独に襲われる。
まさかね、と思いたい。たぶん長い小説の執筆に入っているから心が不安定なんだろうと。そういう人たちがいっぱい登場する小説だから。
一昨日はテレビの仕事を終えると夜の十一時だった。このまま独りぼっちの家に帰ってはヤバイ、そう感じたあたしは夜の街に繰り出すことにした。
飲み友達のマコトに電話をかけた。
「なにしているの?」と訊ねると、
「家でぼうっとしている」と答える。
「室井も暇なの。だったら飲みにいこうか」
あたしはそうしようと思っていたけど、「やめておく」と返事していた。ふと、やつの友人のダッチャンのことを思い出したから。
ダッチャンとはマコトを交えてしか遊んだことがない。電話で何度か話をしたことはあるけれど、それだけだ。そういうば、おとつい電話があったっけ。たわいもない用事で。
あたしはマコトを出し抜いてダッチャンと二人で遊びにいこうと決めた。彼と飲みにいった。
ダッチャンは始終あたしを、女の人扱いしてくれたので嬉しかった。飲み代もスマートに払ってくれた。
そして、わかった。あたしのイライラの原因は、最近誰からも女の人扱いしてもらってないからだと。
書いたものやテレビのコメントを誉められたら、それは嬉しい。九年間、この仕事をつづけてきてよかったとしみじみ思う。なんだかんだいっても、友人達から愛されているのも実感している。有り難いことだ。
でも、違うの。あたしがこの頃、欲しいものは。
作家のあたしじゃなくて、テレビに出ているあたしじゃなくて、面白いことをいう友達のあたしじゃなくて、義理堅く絶対に味方のあたしじゃなくて。
若い女の子たちが、よくいわれる、
「可愛い」
って誉め言葉をかけてもらえるようなあたしが、誰か一人ぐらいの前ではいてもいいんじゃないかしら。
ダッチャンは酔っぱらって「可愛い」って何度もいってくれた。合格。
これからちょっとだけ楽しくなるかも。……でもマコトの友達だしな。てかダッチャン、あたしを「可愛い」っていってくれた数より、「マコトが可愛い」といった数のほうが多かったんじゃないか? 女ったらしの、すさまじく軽いキャラのあいつを。
で、「マコトと似ているあたしも可愛い」って話になったんだった。思い出した、思い出した。とたんに嫌な気分になってきたわい。
やっぱ、気を取り直して仕事に打ち込むか。そういう時期なんだ、きっと。病気にならない程度に、心血注いで小説を書こう。
『ママの神様』の感想、待ってます。
それだけが楽しみだよ。
ぜんぜん関係ないけど、この場でも何度か書いたことのあるへたれジャーナリストのあいつ。
秘書があたしとあいつがどうたらという話を自分のブログで書いたらしいけど、あの男はこういうとき電話をしても捕まりません。翌日電話してきても、死にたい気分は治っているというんだよ。役に立たない男だ、まったく。
2006 03 22 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 『ママの神様』 >

あたしの最新刊小説、『ママの神様』。みんな買ってくれ。買って読んで、感想を聞かせてくれ。
『ママの神様』は今まで書いてきた小説と、ちょっと毛色が違うの。
発売日までは自信たっぷりで、
「違うあたしを見せてやるぜ!」
そう胸を張っていたんだけど、発売日になったらきゅうに不安になってきた。昼飯どころか朝飯も喉を通らなかった。
作風を変えるってどうなんだろ。自分では良い小説だと思うけど。
今まであたしについてきてくれたファンは、残念な気分になるのかな。それとも、室井はこんなものも書けるんだと誉めてくれるのかしら。
ファンあってのあたし。そこをいちばんに考えたいものだ。
ぜひ、感想を聞かせてね。ブログのみんな、頼りにしてるよ。
話は変わって、マンションについて。結果、無事買えることになりました。もう買っちまいました。後はリフォームするだけ。
新しいお部屋にみんなを招待したいけど、全員を招待したらマンションの床が抜けてまう。無理だ。そこで……。
バーチャルで招待!
ってどう? 家に入って居間でくつろぐまでを写真で送るから、みんながみんな好きなように想像するの。
つまらないかな?
『ラブレター』は最終校了も終わり、前書きや後書きも書いてしまった。表紙も決まったしさ。
なんかまた、みんなで面白いことしたいよねぇ。
とりあえず、発売を記念して、眠れそうにないから強い酒でも飲むか。酔っぱらいながらいい気分で、みんでできる新しい遊びを考えようっと。
2006 03 13 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 誕生日プレゼント >
3月4日、21時26分。
ごめん、一週すっ飛ばして。
誕生日だったから。二十六歳の。
といっても、素敵なダーリンと南の島にいっていたなんて話じゃない。
なぜか毎年、自分の誕生日には男が切れてるあたしだ。『自分にプレゼント』が恒例になっている。
思い返せば、去年はダイヤの指輪を自分にプレゼントしたっけか。そして、こういい聞かせたっけか。
「ユヅキ、寂しくないよ。だって、おまえにこんな大きなダイヤをプレゼントしてくれる男などいやしないじゃないか」
少しだけ救われた気分になった。
で、今年。ジャジャーン! あたしは2006年の自分の誕生日、自分にマンションをプレゼントすることにしました。やったー!
たまたま女優をしていた時の先輩から、「遊びに来い」と命を受け、先輩のマンションへいったら空き部屋がオープンルームになっていたではありませんか。暇だから見にいったよ。
タワーマンションの最上階、窓からは小さく東京タワーが見えた。
「すんげー!」
あたしはその景色にやられたね。急いで税理士に電話をした。現在、自分がいくらもっているかを聞くために。
ぎりぎりだが、買える。いける。
ローンで買ったら誕生日プレゼントにならないもんね。誕生日プレゼントは、ポンと現金で買うだろ、ふつー。
あたしは迷わず、申込用紙に名前を書いた。申し込みの順番は二番目。一番目の人が値切っているみたいで、二番目のあたしが買える可能性も見えてきた(不動産屋談)。
早く結果がでないかな。ワクワクする。
そう、あたしはワクワクしている。まわりの人間はハラハラしているみたいだが。
施工主とか、建物の場所の地盤とか、はてまた間取りの風水とか、ちゃんと調べろとまわりはいう。
それに、ここが肝心なのだが、なにを隠そうマンションを買ったら、あたしは文無しに近い状態になる。事務所の社員の給料も、自転車操業のようにまわしていかねばならん。
……ま、なんとかなる。たぶん、きっと。
なんとかならなかったら売ればいいんだ。多少、損をこくかもしれないけどさ。
2006年の誕生日、自分にマンションをプレゼントする。なかなか華やかな誕生日だ。素敵な一年になりそうだ。
今のご時世、お偉い政治家のオヤジだって、自分の女にここまでしてやらんだろ。よくわからないが、
(勝った!)
あたしはそう思った。そう思えることが肝心なんだ。でなきゃ、寂しくて死んでしまいそう、じつは。
PS
素敵なお人形は、【ゆらりゆらり……】 【独歩日々メモ】のお二人にプレゼントしたいと思います。のちほど、係の者から連絡がいきます。可愛がってねん。
2006 03 06 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック
< 読者のみなさまに素敵なプレゼント >
2月22日、0時。
暦では春だというのに未だ、寒い日がつづいております。みなさまにおかれましては、風邪などおめしになられてはないでしょうか。いかがお過ごしですか。
さて、日頃からご愛読くださる読者のみなさまに素敵なプレゼントのお知らせです。

プレゼントその1

プレゼントその2
その1、その2セットで先着一名の方に、プレゼントしたいと思います。本気で欲しいと願ってくださる方は、その旨を記入しトラックバックしてください。折り返しこちらから連絡いたします。
なお、その1の人形はちょっと動いたりします(実母談)。その2の人形はちょっと髪が伸びたりします(実母談)。
可愛いあたしの妹分です。
ロンドンに旅行したとき酔っぱらってアンティーク市でその1を買って、その2は地方公演に出かけたとき酔っぱらって骨董品屋で買ってしまいました。
その1、その2とも、出会った瞬間目が合ってしまい、怖くて仕方ないのに拒絶できず買ってしまったのです。きっと、泥酔していたからでしょう。
あたしは今、単身赴任で独り暮らしをしております。なので、どうかよろしくお願いいたします。
その1、その2とも、現在はマネージャー見習いの阿部くん(27歳・独り暮らし)に預けてあります。阿部くんは毎日、泣いております。
どうかあたしたちを助けてくださる方が現れてくれますように。勇気ある方のご応募、お待ちしております。
2006 02 25 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック

