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< 人身売買 >

 8月31日15時
 
 作家の板東真砂子さんが、自分の飼い猫を避妊させず、生まれた子猫を「殺している」と日本経済新聞に書いたエッセイに対し、抗議が殺到したらしいね。
 彼女は雌猫を三匹飼っており、子猫が生まれるたび家の隣の崖に放り投げているんだって。
 彼女いわく、
「人は他の生き物に対して、避妊手術を行う権利などない」
「自分の育ててきた猫の『生』の充実を選び、社会に対する責任として子殺しを選択した」
 うーん、彼女のいっていることもわからなくもない。でも、だからといって新しい命を始末する権利はあるんだろうか。
 まあ、そこらへんのことは置いといて(一番重要であると思われるが)、このエッセイのタイトルだ。
 エッセイのタイトルは『子猫殺し』。
 あたしは妙なところで関心してしまった。
 このタイトルはいい。イカす。
 ニュースで話題になっていなくても、日経新聞をとっているなら絶対に読んでいるだろうな、と思った。
 だって、「子猫」に「殺し」だ。
 シンプルでわかりやすく、そして背中がぞくっとするようなタイトルじゃぁありませんか。
 そういえばこのタイトルに似たもので、外国人の作家が書いた小説『赤ん坊を落とす』というのがある。
 あたしはそのタイトルも抜群にいいと思った。おなじような理由から。
 作品の名前であるタイトルって大事だ。けど、あまり考え過ぎちゃいかんのかも。
 妙に懲りすぎたタイトルっていただけない。恥ずかしいよ。
 ……ずいぶん話がズレちまったな。板東さんのエッセイについてだった。
 あたしの女友達、いかず後家やバツイチらは、そろいもそろってその濃ゆい愛情を犬や猫に注いでいるので、この問題に対しかなり熱くなっていた。
 ちょっとうるせー。
 彼女らのいうことはもっともだと思う。けれど、犬や猫に対し自分のことをママという彼女らには少し引いてしまうのも事実。
 その愛情をどうして人間の男にいかせないのだろう。
 先日、こんなことがあった。板東さんの問題で騒いでいる女友達の一人から、すげぇ話しを持ちかけられたのだった。
「うちの弟、消費者金融で首がまわらなくなってさ。はじめは家族で尻ぬぐいしてたんだけど、これ以上はね。……ねえ、あんた、一千万でうちの弟買わない? 馬鹿だけどよくしこんであるから、いわれたことはちゃんとやるよ。結婚するなり、愛人にするなり、家来にするなり。煮ても焼いても良し! しかも、あんたに逆らったらうちの家族みんなで弟を殴りにいってやるアフターフォローつき。どうじゃーっ!」
 マジかよ。
 驚いたけど、面白そうなのでほかの女友達を誘って、弟を彼女の田舎まで見にいった。
 やなで鮎食い放題、温泉つき。ぜんぶ彼女の接待だ。
 でも、結局弟を買う人間はいなかった。
「身体があんなに大きかったら、家に置いとく場所も考えなきゃならないしなぁ」
 あたしはいった。
 ほかの友達は、
「ハンサムだけど、三十歳を越してるのがね。だって、あたしの老後を見てくれなくちゃ」
 接待費まで使い弟を売ろうとした友達はとても悔しそうに、
「五百万ならどうじゃ!」
 あのー。よく考えたら人身売買って法に触れる行為だと思うんですけど。
 犬や猫と違うんだから。板東さんより酷いじゃん。

2006 08 31 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック

< リング >

 8月21日18時
 
 呪われているのかもしれない。
 息子が帰ってからというもの、仕事はもちろん、なんにもする気になれない。
 なんにもする気になれないあたしは、なにをしていたかというと、ぼけっとビデオを観ておった。
『ほんとにあった呪いのビデオ』シリーズを、ずっと。
『ほんとにあった……』は、投稿者が送ってきた幽霊が移っているビデオテープを紹介する作品だ。バージョンアップ、スペシャルなどなど、三十本は発売されている。かなり怖い。
 あたしはそれを、なぜかムキになって一気に観た。三十本、全部だ。
 テレ東のテレビチャンピオン、『ほんとにあった……』のファン選手権があったなら、間違いなくチャンピオンの座を狙えるだろう。どうかしている。
 いや、どうもしてないか。気分が沈んできたら、とことん暗くなってみるというのがあたし流だ。
 にしても、こんなにやる気がないのはビデオを見過ぎて呪われたなんてことじゃないだろうな。『ほんとうにあった……』には、何人かそういう人間が匿名で出ていたしな。
 いやいや、その前にそういえばホラー小説を書いておった。
【嬰児の記憶】というホラー小説を。
 もしかして、そのせいかいっ。
 そう口に出していってみたら、秘書の神林に却下された。
「なんでもなにかのせいにするその癖、直したほうがいいと思うよ。室井もいい大人なんだから」
「いいや、あたしは呪われている。この無気力感は呪いのせいだ」
「そんなことあるわけないだろ。だいたい怖がりの癖に怖いビデオをわざわざ借りてきて、馬鹿じゃなかろうか。そんなもん観るから夜独りになれなくて、原稿が進まないんだ。馬鹿みたい」
 こいつはすぐに人のことを馬鹿という。むかつく。
 自分も失敗ばかりの粗忽者のくせして。
「そういや、あんた氷川神社いってきた? お札をもらいに」
 あたしはいった。神林は「しまった、忘れてた」という表情をした。しめしめ。
 引っ越しするとき、方位避けのお参りしてきたのだった。そのときいただいたお札を、こともあろうか神林はゴミと一緒に捨ててしまった。それからあたしは、もう一度お参りにいって新しいお札をもらってくるようやつに頼んでいた。今の今まで忘れてたけど。
「おまえのせいだ。おまえのせいであたしは無気力なんじゃ」
「違うね。なら、あたしが呪われなきゃおかしいって話だろ。あたしがゴミに捨てたんだから。なのにあたしはピンピンしている。おまえは呪われているわけじゃない、ただの怠け者だ」
 そうだよな。呪われるなら、お札をゴミにしたこの女が先だよな。セーフ。
 にしても、お札の一件を思い出したら、今夜も独りでいれそうもない。
 彼氏でも呼ぶか。しかし、そうなると、また仕事はできまい。
 ……リング。
 そんな言葉が頭に浮かぶ。
 あの映画は怖かった。あたしも呪いの輪の中に入ってしまっているんだろうか。
 イヤーッ!
 とりあえず無気力の輪から抜け出すために、『ほんとにあった……』の製作会社、パオ企画を訊ねてみるつもりでいる。マジで全部、やらせなしの投稿ビデオなのかが知りたくて。
 昨日、そういうところに顔が利く友達に電話し、その旨、頼んでおいたんだ。
 もちろん神林には内緒だ。馬鹿にされるだろうから。
 なのに、あたしの気持ちを読みとったように神林がいった。
「室井も臆病すぎ。あのビデオは良くできた作り話なんだって。だって、噂真時代のあたしの手下だった女優の卵が、投稿者として出演してるんだから」
 それはまことか! 早くいえ。
 
 
【おしらせ】

 ホラー小説ゲームの【嬰児の記憶】が携帯サイトで本日配信されました。
 あなたの判断によって、ゲームは進んでいきます。
 第一章が終わるたび、呪いのメールが送られてきたりなんかして……。
 怖いもの好きな人は、ぜひ参加してください。
 ここよ↓
http://www.enterbrain.co.jp/tkool/info060807_adv/index.html

2006 08 21 [ゲーム] | 固定リンク | トラックバック

< 明るい育児放棄の勧め >

 8月14日17時
 
 ほんとうはもっと早くに原稿をあげていた。あげてはいたんだけど、なんてこったい、秘書の神林がアップするとき消してしまった。で、放心状態に陥っておった。
 こういうこと、一度や二度じゃないとだけいっておこう。
 一度書いた原稿を再び書くのはどんなイヤか。
「こらっ、てめー、またかい!」
 そういってグーで横っ面を殴ってやりたかった。
 回し蹴りをくれたかった。
 いやいや、
「バカヤロー!」
 と怒鳴り、そのままグレて新宿へ飲みにいきたくなった。
 しかし、あたしはしなかった。優しいからではない。ヘビー級の神林は強そうだからでもない。
 夏休みに入った息子の相手をしてもらっているからだ。
 一年間の単身赴任となってから、夢にまでみてしまうぐらい恋いこがれている息子だった。
 だが、毎日毎日、朝昼晩と顔を突き合わせているとね。
 あの男、夜はいつまでも起きているでやんの、朝はやたらと早起きするでやんの、昼寝はいっさいしないでやんの。とにかく寝ないのだ。
 起きている間、ずーっとしゃべってる、ずーっと動いてる。見ているこっちが疲れてまうわ。
 あいつが寝てからじゃないと仕事はできない。おかげであたしは、極度の睡眠不足である。命の危険を感じるほどだ。
(あの男に殺される)
 そう思ったあたしは、緊急手段を取ることにした。
 子供のいない友達の家に、息子と一緒に押し掛けるのだ。そして、自分はさっさと寝てしまう。強い酒を飲んでつぶれるか、友達が止めるのも聞かず睡眠薬を飲んでしまうか。
「お父さんのいない可哀想なユウタくんを、よろしくお願いいたします」
 そう一言いい残して。
 息子には、
「今日、おまえは××家の息子だ。どれだけそこんちの子供になりきれるか、本日はそういうゲームをする」
 と言い聞かせてある。
 嫌われないよう同じ家に何度もいかないのがコツね。
 子供のいない友達が『子供がいるという体験ゲーム』を楽しんでいられるうちはオッケーだろう。
 しかし、前出の神林であるが、息子が懐いているのをいいことに、じつはもう三回もやつの家にお世話になってしまった。群馬にあるやつの実家にまで世話になった。
 そしたら最近、やつはこんな悲しい独り言をこぼしたではないか。
「あたしは子供を産まないだろう。産まないに違いない」
 しぇー、あたしら親子はやつをそこまで追い詰めておったのか。
 神林のお父さん、お母さん、ごめんなさい。孫の顔を見ることを、とっても楽しみにしていたんだとか。
 てか、「室井さんとこの親子を見てたらうちの娘もその気になるかも」なーんていってたんだよな。どうしよ、反対になっちまったよ。
 ユウタじゃ駄目かしら。ユウタならいつでも貸します。無料のレンタル孫として。
 とここまで書いていたら神林がパソコン画面を覗き込んで、
「育児放棄をここまで大胆に告白するなんて、すげぇ女だ」といった。
 すごいというのは、そこじゃないだろ。さっきとはまったく違う原稿を、すらすらもう一本書いたことだろ。
 さっ、二本も原稿を書いたら腹が減った。これから食事を作るのは面倒だし、昨日は寝てない。今日は誰のお家にお邪魔しようかしら。あっこの家は飯がうまいし、あっこの家は旦那が息子を風呂に入れてくれるし……。そうそうおまえは巨乳が好きだっけ。なら、あの女の家か。
 いくぞーっ、息子よ! パジャマと歯ブラシ用意しろ!

2006 08 14 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック

< 生理痛と結婚 >

 8月2日 10時
 

 生理痛が酷い。
 こんなに辛い生理痛を味わったのは、はじめてのことかもしれない。下痢のような痛みが四六時中つづくんだから。
 全身がばらばらになりそうなほどだ。熱も出てきたのかもしれない。関節という関節が、腫れている様子。
 そういや母親の生理があがるとき、おなじようなことをいっていたのを思い出した。
 まさかね。三十六歳であがるってことはあるまいな。
 でも、それならそれでいい。
 もう痛みから解放されたい。
 昨日は友達を知り合いの男友達に紹介する約束をしていた。身体の調子が悪いから別の日に、とも思った。
 けど、あたしも、友達も、男友達も暇な日なんて滅多にあるもんじゃない。
 あたしは蛇女のようにズルズル床を這いまわり、着替えをすませた。そして、ボーイフレンドのAくんを呼び出し、待ち合わせ場所に連れてってもらった。独りじゃ歩けないほど痛いんだから。
 待ち合わせの和食屋では痛み止めが効いていたのか、普通に話しをすることができた。
 しかし、二人と別れて家に戻ってからが大変。体調の悪さから、ゲロゲロ嘔吐した。やはり蛇女のようにトイレまで這っていって。
 便器にしがみつきながら、Aくんを呼んだ。ベッドへおんぶして連れていってもらった。
 眠るまでお腹をさすってもらう。
 こういうときだ。結婚という二文字が頭に浮かぶのは。
 Aくんに結婚しようといわれ、断ったのは最近だ。
「あたしは結婚不適格者。息子と二人、最小単位の家族でいいの」
 とかなんとかいって断ったんだった。
 ……よかったのか、それで?
 難しい問題だから体調が良くなり次第、もう一度、考えてみようと思う。
 う〜、腹が痛ぇ。
 

2006 08 02 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック