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< 噂の女 >

 10月25日。午前零時。
 
 あら、まただわ。また漢字の間違いを指摘されちゃったわ。
 家は、一件二件と書くのではなく、一軒二軒なんだそうだ。教えてくれてありがとう。
 けど、正直にいえば、これはあたしの問題ではない。編集者の責任ね。
 担当を呼んでこいっ。おい、羽田。手抜きをするんじゃないよ。恥をかいちまっただろうが。
 まあ、そんなこたぁ、どうでもいい。ラブレターを本にする件は着々と進んでいるよ。
 秘書も雇ったしね。
『噂の真相』の元編集者の神林広恵という女。あの雑誌もそこの編集者も大大大嫌いであったはずなのに、運命って皮肉だなぁ。
 今ではもう過去のことだから話せるが、噂真がなくなる一年ぐらい前のことだろうか、あそこの専属記者とつき合っていた。ずうっとずうっとあたしの悪口を書いてきた男と。
「話すことなんてないよ」と怒鳴るあたしに、
「ほんとうはもうだいたいのことは知っている。好きだから」
 と、とんちんかんな告白をしてきたイカした男であった。
 はじめは罠かと思ったね。すげぇな、やつらってば、真実を暴くためには美人局みたいなことまですんだ、なんでもありかいっ、と思った。
 で、面白そうだから、話に乗ってみた。
(あたしはそんなに馬鹿ではない。逆に情報を仕入れてやる。あたしの魅力でメロメロにして、もう悪口を書かせないぜ)
 と燃えに燃えた。
 売られた喧嘩は買ってやる的な燃え方であった。あったはずなんだけど……。何度もデートをしているうちに本気でその男に惚れてしまったのよね。あたしの悪い部分をすべて知った上で愛してくれているという安心感があったし、息子をとても可愛がってくれたし。
 神林はその男の友達である。親友であるといっていいかもしれない。その男が仲介に立っていなければ、今でも嫌いだったろう。 何度もいうが、あたしは『噂の真相』という雑誌が大嫌いだから。いっとくけど、記者とつき合っていたからといって、誰かを売ったことはないからね。
 本屋で立ち読みをしていてヒステリーを起こし、破って買わなきゃいけない羽目になったことがあったっけ。事実無根のことを書かれて、泣いたこともあったっけ。事実を書かれて、泣いたこともあったなぁ。
 でも、愛していた彼が「いいやつだ」という神林なのだから、最初から「いいやつなんだろう」と信じることができた。
 実際、神林のさっぱりした人柄が気に入った。悪口を書く、書かれるという関係のあたしたちだったけど、仕事を超えて友達になった。
 仕事では容赦なかったが、べつに憎くて記事を書いているわけじゃないというのはわかったしな。酒を飲んでいる席でなにげなく、陰で意地悪を企んでいる人物や、行動についての問題点を指摘してくれたりなんかして。
 まるで、おっ母のようだよ、神林。
 噂真がなくなると決まってからすぐのことだ、彼女を秘書にスカウトしたのは。
 お母に堂々と守られることになり、あたしはある意味、最強かもしれないよ。
 ついこの間、週刊誌とすったもんだがあった。あたしはぜんぜん関係ない第三者だっていうのに、その場にいたってだけで記者達に探しまわられた。
 あたしの友人や知人にあたしの携帯番号を聞きまくったようで、方々から電話がかかってきた。
「あんた、なにやらかしたの?」
 と友人たちが心配するのはよくわかる。
 でも、ばんばん電話がかかってきたら、仕事ができないってーんだよ。
 原稿が書けねーっ! むかっ腹が立ったあたしは、一杯引っかけて編集部に電話した。
「担当者出せーっ! あたしがなにしたっていうんだよ! なんにも知らないっつーんだよ! 仕事ができねー、どうしてくれる?」
 翌朝だ。やばいことしてしまったなぁ、と心配になってきたのは。
(なんにも関係のなかったあたしであるが、昨晩、自ら問題を起こしてしまったのではないか)
 でも、神林がいるから大丈夫だ。神林の提案で、翌日に丁寧な謝りの電話をしてきてくれた編集者に、「酔っぱらってたから、ごめんね」と可愛らしく笑って誤魔化す作戦を取った。
「ほんとになにも知らないんだ、昨日のこともよく覚えてないぐらいでさ。ダハハ」
 そして、ここが肝心。神林のいいつけ通り、すべてはなかったことに、という確約も取り付けた。
 神崎爺、酒を飲んでなにをやらかしたのかわからないけど、そんなに落ち込まないで。ここに一人仲間がいるよ。揉め事が起こったら、神林を貸してあげるよ。
 そうそう神林が幻冬舎から出している『噂の女』という本をよろしく。噂真時代の彼女のことが書かれてます。あたしの昔のダーリンのことも。神林がどんなに猛烈な女かわかるよ。
 ついでにあたしの文庫、『プチ美人の悲劇』もよろしくねん。

2005 10 25 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック

< 暴露 >

 10月18日23時。
 ごめん、一週すっ飛ばしてしまって。すっげぇすっげぇ忙しかった。
 仕事で忙しかったわけじゃない。あたしがもっとも苦手としているお片づけで忙しかった。
 暴露してしまうが、現在、家を三軒も借りている。理由は、家族全員、片づけられない人間だからだ。
 結果、家はどんどん汚れていく。それはもう病気になりそうなほどに。
 今もあたしの顔のまわりを、黒い小さな虫が飛びかっている。我が家生まれの虫なのに、ちっとも可愛いと思えない。
 だいたいこの虫が発生しだすと、家族は新たな安住の地を求める。ようするに汚い家から逃げるわけ。
 そして、その結果が三軒の家になっちまった。
 いずれかの家で生活しているとき、いずれかの家に掃除のプロを入れる。つまり、あたしら家族は、三軒の家を放浪している。非常に落ち着かない。
(このままでいいんだろうか)
 そんなことはずーっと考えてはいたさ。でもでも、ほんとにほんとに掃除が嫌いなんだもん。
 不思議だよ。原稿は五時間でも六時間でも集中して書いていられるのに、片づけは三十分しただけで死にたくなるのはなぜだろう。
 しかし、そんなあたしたち家族に救世主が。今月から雇った秘書だ。
「こんな場所じゃ仕事できない」
 彼女のその一言で大掃除をすることになったのだ。彼女の指揮のもと。
 それにしても嫌いなことをするのは、苦しい、辛い。
 たまたまボーイフレンドの一人から電話が掛かってきて、一緒に食事をしようといわれた。家族に見つからないよう、そうっとトイレで着替えと化粧をすませた。
 泥棒みたいに抜き足差し足で玄関まで歩いていった。ドアを開けた瞬間、母のがなり声がした。
「どこにいく?」
「いや、ちょっと」
「……ケッ。で、あんたのボーイフレンドは、あんたが片づけられない女だってのは知ってんの? 綺麗に化粧してめかしこんじゃって。それを話さなきゃ詐欺だろう」
「そんなこと、いえるわきゃねーだろー」とあたし。
「おまえらうるせーよ。だいたいおまえら女のくせしてよぉ」とオヤジ。
「馬鹿! 馬鹿! 馬鹿!」と息子。
 みんなかりかりしている。嫌いなことを強いられて。すでに怒鳴り合わなきゃ会話もできない。
 仕事のせいにして、家に帰りたくないよ。けど、今回はそれができない。家族にスケジュール帳をチェックされている。
 普段はあたしを置いて、平気で温泉旅行にでかけてゆく家族のくせして。あたしの仕事なんかぜんぜんお構いなしのくせして。
 誰かーっ、掃除の得意な人、うちの家族になりません?
 

2005 10 18 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック

< 不条理だよ~ >

 10月3日 午後八時
 
 今、泣いてるの。さっきから泣いているの。そうしていても問題は解決されっこないんだけれど、途方に暮れてしまって。
 明日の五時にハイヤーが迎えにくるまでに、
 東スポ
 ウィークリーヨミウリ
 女性自身
 ラピタ
 リベラルタイム
 本当にあった主婦の体験
 てぃんくる
 の原稿を入れなきゃならない。
 あたし、どうしたらいいの!
 じつは、昨日も今日も外に出る仕事がなかった。そこで、息子と高田馬場にあるスケートリンクにいってきた。
 滑って転んで尾てい骨をしこたまぶつけてしまったよ。三十五歳なのに、尻に蒙古斑ができている。痛くて、長時間、椅子に座っていられない。
 で、そんなあたしが今日一日なにをしていたかというと、寝転がって鏡を見ながら首の皮を剥いてたの。
 オバジをはじめて二週間が経った。顔の皮はほぼ剥けきったかも。まだ赤ら顔で全体的に皮膚が突っ張っている感じだけどね。
 今、酷いのは首。皮ががさがさのぼろぼろになっている。で、気づくと弄っているんだな。
 まあ、そんなことはどうでもいっか。どうでもよくないと騒いでいるのはマネージャーだけだわよ。マネージャーの直樹さんだけ。
 事務所絡みの仕事がないという日でも、頻繁に電話がかかってくる。
「顔の様子はいかがですか」って。
 あたしが明るく、
「酷いよー」
 と答えると、ため息なんかついちゃって。
 なんでそんなに深刻ぶっているのかしら。マネージャーという仕事柄、商品としてのあたしをもっと理解しないといけないなぁ。
 はっきりいって、あたし、女・蛭子枠じゃん。蛭子といえば、漫画家の蛭子さんよ。
 誰もあたしに綺麗なんて期待してないってーの。あたしは意中の異性とご飯を食べにいくときにだけ、綺麗であったらいいはずだ。
 ってなことを説明した。直樹はふたたびもっと重いため息をついた。
「でも、室井さんはテレビに出ている人なんですから、もっと自覚していただかないと」
「なにいってんの。あたしよりもっと汚いのも、平気でテレビに出てるじゃん」
「それは個性をウリにしている男性タレントさんの話では? 室井さんは女性なんですよ」
「じゃあさ、あたしが綺麗になったら、テレビに出てすましていていいんだ。前から思ってたんだけど、あたしったらわざわざモテなくなるような発言ばかりしているような……。綺麗になって、もうそういうの止めようかしら」
 あたしがそこまでいうと直樹は黙った。必死で言葉を選んでいるようだった。
 ほんとうは、
(いくら綺麗になる努力をしたところで、観賞用の人間にはなれない。無駄な努力じゃ)
 ってなことがいいたいんだろう。わかってるって。しかし、いくら真実であったも、それだけはいえんだろうな。一応、稼いでるし、あたし。
 それに、あたし、知っているのよ。巷で綺麗と騒がれている人達が、どんな努力をしているかを。
 女優さん達はドラマや映画に入ると、その後、長い休みをもらえる。CMにばんばん出ているタレントさんなどもそうだ。
 彼女たちは長い休みを使って、オバジなどを試していたりするんじゃないのか。オバジとはいわず、いろんなことをしている気がする。そういう噂もちらほら聞く。
 つまり、でかい仕事がどかんどかんと入ってくる女は休みも多く、その期間にさらに綺麗に、小金をせっせと稼いでいる人間は現状維持で、ってことだよな。
 不条理だよ~。
 そりゃあ、あたしは物書きが本業だ。綺麗か綺麗じゃないかはあまり関係ない。
 けど、狭い範囲の感心でいいんだもん。テーブル越しにあたしを見つめてくれる男性が、
(この間会ったときより、綺麗だな)
 そう思ってくれることを願って、馬鹿みたいといわれようがこの努力は止めないよ。
 こりゃあもう、個人的な価値観に関わってくる問題なので、直樹さんがいくらあたしを説得しようとしても無駄だと思う。
「あんた、あたしの男でもないくせに」
 そういわれたら反論しようがないもんね。赤くなって俯くんじゃないのぉ。
 たまたま事務所につけられた専属マネージャーの直樹さんが、得意なタイプでよかったよ。
 が、しかし、こんなに我が儘であっていいのかと悩んでいるのも事実。やりたい放題したい放題のツケがそのうちまわってくるんじゃないかと……。
 案外、気が小さいのよ、あたし。
 そこで、今月から秘書を雇うことにした。今週からやってくる。
 その昔、週刊文春で『綺麗な編集者ランキング』、一位を取ったことのある女。でも今は、肥えてただのオヤジだったりする。
 彼女は編集時代から、あたしにいいたいことをばんばんいうやつであった。
 気の強い女と我が儘な女、どちらがイニシアチブを取ることになるんだろ。なんだか面白くなりそうじゃ。
 その報告はまた後日ね。そろそろ原稿を書かなきゃ不味いから。
 いかん、いかん。ブログを現実逃避に使ってしまった。
 
PS
 少し前のことになるけど、誰かあたしがテレビで被っていた眼鏡付きの帽子のこと訊いてたよね。ちゃんと調べておいたよ。
『(株)シゲマツ』という会社の『MAOZI』ってブランドらしい。
 たしか三千八百円くらいだったような。
 あたし、帽子が大好きで50個くらい持ってるの。
『(株)シゲマツ』のは、このほかに二個持ってた。
 今年、増やしたのは、迷彩キャップ。男の子っぽいそれに、赤いコサージュをつけて被ってる。
 こっちもお勧めよん。

2005 10 04 [日記・コラム・つぶやき] | 固定リンク | トラックバック